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健康計画

ここ数年、子どもをとりまく生活環境の変化が急速に進んでいます。自然破壊、環境汚染、住宅の高層、集合化、早期からのテレビ・ビデオ視聴など、乳幼児期の子どもの健やかな発育・発達を阻害する要因が少なくありません。その他、生後すぐからの冷暖房つき室内での生活、車や乗り物利用の移動といった、おとなにとって便利で楽な生活は、発達途中にある子どもたちの体そのものの発育や身体機能の発達を遅らせたり、アンバランスを生じさせる原因にもなっています。
 一方、子どもを育てる親たちの価値観も大きく様変わりしています。基本的な生活習慣やしつけよりも知育優先で、やみくもに早期から英語塾や幼児塾へと子どもを追い立てていく傾向がみられます。また、仕事で帰宅が遅い父親の生活が、そのまま子どもの生活リズムにも影響をおよぼし、夜型生活があたりまえにさえなりつつあります。こうした、環境の急変は、当然、保育園の生活においてもさまざまな問題を生じています。

 

□朝ごはんは元気の源

「子どもは風の子」「子どもは早寝早起き」という言葉は今や死語なのかもしれません。おとなと同様に、夜更かしするのが当たり前…。その結果、朝はなかなか起きられない、食欲がない、などの理由で朝ごはんを食べない子どもが増加しているのは嘆かわしいものです。そして、小さい頃に身についた朝食ぬきの習慣はおとなになっても、なかなか改善できない、との報告もあります。このような乱れた食習慣を長年続けることにより、糖尿病や高血圧症などに代表される生活習慣病が発症しやすい環境をつくりあげているのも事実です。

 

体は朝食で目覚める

 朝食をとることにより、睡眠中に下がった体温を上昇させて、血流をよくします。消化液などの分泌も高まり、消化器系が活動を開始し、食後に排便を促すなど、活発に働くようになります。また食事からのエネルギーが脳に供給され、活発な活動を開始します。
 さらに、食物を口に運ぶ動作(手を上下に動かす)、食物をかむ動作(そしゃく)、飲み込む(嚥下)といった食行為によって、視覚、嗅覚、味覚などの感覚神経も刺激され、体全体を目覚めさせてくれます。いわゆる、朝食は体が『休息モード』から『活動モード』へと移行するための大切な役割を果たしてくれます。

集中力がアップ

 脳の重さは、おとなで体重の1/50を占めていますが、エネルギーの消費量は体全体の1/5にも達します。(安静時)ですから、食事からエネルギーをとらないと脳は活動できません。アメリカのテキサス大学で行われた実験では、朝食をとったグループととらなかったグループで午前中に同じテストを実施した結果、朝食をとったグループの方が成績も良く、課題に対する集中力や持続力も優れていたという報告があります。朝食をとることにより『休息モード』から『活動モード』への切り替えがうまくいき、十分なエネルギー源(ブドウ糖)が脳に供給されて、集中力が高まり能力を発揮できるわけです。

正しいリズムの確率を

 朝食をとるようにするためには、生活リズムを変えることが先決です。「夜遅くまで起きている」⇒「朝はなかなか起きられない」⇒「食欲がなく、朝食は食べれない」、このような悪循環のリズムとさよならするために、今より30分早く寝て、30分早く起きる習慣をつけましょう。そして、果物やヨーグルトなどの、のどごしののよい食品から、朝ごはんをとる習慣をスタートさせます。
 子どもひとり、無言で食べる「弧食」ではなく、家族みんなで食卓を囲む時間を少しでも作るために、私たちおとなも努力しなければならない時代ではないでしょうか。
 

□忘れられている、よい『朝の目覚め』

十分に睡眠をとった翌日の、朝のすがすがしい目覚めは、その日一日を楽しく健康的に、そして積極的に生活するための重要なポイントといえます。心身がしっかりと目覚めていない状態では、朝食がしっかり摂れない、忘れ物が目立つ、交通事故にあう危険性が増えるなど、保育園にいく前からいろいろな問題が考えられます。これらは、質のよい睡眠と、すっきりした目覚めを得ることが、解決策です。
新生児期の睡眠時間は平均20時間と長く、眠い時に眠り、満たされると起きるということを昼夜の区別なく繰り返していますので、「朝の目覚め」といわれている目覚めは、この時期にはまだありません。生後1~2ヵ月頃になると夜の睡眠の方が多少長くなり、昼間は断続的な睡眠となり、3ヵ月を過ぎる頃になると夜の方が長くなり、昼間は数回の昼寝という型になってきます。このようなパターンから昼の睡眠の回数や長さが少なくなって、幼児期へと移ります。幼児期では、昼は午前と午後の昼寝だけになり、あとは夜の睡眠となってきます。そして午前の睡眠をとらなくなる頃から朝の目覚めが生活の中で重要となってきます。
 厚生労働省がまとめた乳幼児栄養調査では、夜更かしをする幼児が増え、午後10時を過ぎないと眠らない「夜型」が約4割に上がっていることがわかりました。さらに全体の10人に1人は午後11時以降も起きている準“深夜族”でした。親の夜型生活の影響が大きいとみられ、厚生省は「夜更かしは夜食の習慣や朝寝坊による朝食抜きにつながり、肥満の原因にもなるので望ましくない」と注意を呼びかけています。

 

□遅れぎみな視力の発達

 ここ数年、DVDやゲーム機が氾濫し、すでに乳幼児期から近距離で目を使う時間が増大してきています。それが視力の発達を遅らせ、小学生以上での視力低下の要因になっているのではないかと議論されています。
 視力の発達が著しいこの時期、できるだけ戸外での活動を増やしもっと遠くを見るとか、動いているものを目で追う活動、例えば、ボール遊びや鬼ごっこ、虫とりなどを意識的に保育内容に組み込む必要が出てきています。

 

□肥満傾向が進んでいる

 飽食の時代を反映して、子どもたちの肥満傾向が進んでいます。家庭生活においては、乳児期はテレビ・ビデオでおもりをされ、幼児期は集合・高層住宅のために外に出て遊ぶ機会も少なく、室内でも静かな生活を強いられている子どもが最近ますます増えています。それでいながら、食事は高カロリー・高タンパク、おやつも食べたいたいだけ食べることができる状況にあります。乳幼児全体の生活が運動不足傾向になっているわりには、摂取カロリーが過剰なのです。いまのところその影響は幼少期にはあまりあらわれていませんが、年齢が高くなるにつれて肥満傾向は進み、就学後、それはより顕著になっていく傾向にあります。今後、それが低年齢化してくることも予想され、注意が必要です。

 

□不器用な現代の子どもたち

 現代の子どもたちは、ボタンがとめられない、雑巾が絞れない、ひもが結べないなどといった状態です。不器用さの実態は回復のきざしが一向に見えないどころか、悪化の一途をたどっています。手が不器用なのは、脳の細胞を充分働かせていないために起こっている現象です。脳と手は直結していますから、脳を働かせなければ手は動くはずがありません。手が器用に使えないということは、脳が必ずしも発達していないということではありませんが、脳を充分に使っていない、あるいは充分に鍛えていないということです。しいては、手を使う教育、あるいはしつけをないがしろにしてきた結果でもあります。別言すれば、機械まかせ、他人まかせの手抜き教育の結果だと思います。人間は、手を充分に働かすことによって、今日の文化・文明を築き上げてきました。手抜き教育・手抜きしつけは、手抜き文化を作ることになり、ひいては人間的なものの本質を失うことだといえます。今こそ、手先教育が必要だと思います。

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